在宅で薬剤師は不要?フリーランス薬剤師が学んだ信頼される力

働き方

自己紹介

こんにちは!
Pharmalanceのはしけんと申します。

大手ドラッグストアに3年間勤務したのち、現在はフリーランス薬剤師として活動しています。
複数店舗と契約し、週6日現場に入りながら、在宅や服薬支援に全力で取り組む毎日です。

「労基がないので働き放題です(笑)」なんて冗談を言いつつも、患者さんに寄り添える時間が増えたのはフリーランスの特権だと感じています。


患者さんの背景

今回紹介するのは、在宅で関わっている患者さんの事例です。

  • 就寝前のエチゾラムのアドヒアランス不良(実際にはご家族に没収されている)
  • 不安症状が強く出ている
  • 最近は喀痰がからむ症状が続き、家族に相談しても十分に取り合ってもらえない
  • 僕が訪問した際には「息苦しさに苦しむ」ほどの状態

こうした状況が続いていました。


薬剤師は在宅に不要なのか?

ある日、訪問看護師さんからこんな言葉をいただきました。

「アドヒアランス改善は私たちが週2回訪問するので十分です。薬剤師さんは薬を作って持ってきてくれたら大丈夫。実際、今もそれだけですよね?」

正直、悔しかったです。
薬剤師として「ただ薬を運んでくる人」と思われていることにショックを受けました。
でも同時に、僕自身がまだ十分に役割を果たせていないことの裏返しでもあると感じました。


僕がとった行動

「薬を届けるだけ」では終わらせない。
そう思った僕は次のような工夫をしました。

薬袋を工夫する

  • 就寝前の薬袋を加工し、イラストを加えて「これは自分の大切な薬」と意識できるように。
    患者さんは英語が好きなので、英語仕様に。
  • 朝・昼・夕食後の薬袋には赤・黄・青のラインを入れ、視覚的にわかりやすくした。

実際に患者さんへ持参すると――

「かわいい!これは嬉しい!」

と笑顔に。アドヒアランス改善につながるきっかけを作れました。

医師への処方提案

報告書にはこう記載しました(省略Ver)。

【体調面】「痰が絡んで息苦しい」との訴えあり。ただし喀痰で一時的に軽快。
【提案】去痰薬の追加処方(カルボシステイン、アンブロキソール等)をご検討ください。

結果的にアンブロキソール45mgが処方され、患者さんから大きな感謝の言葉をいただきました。


在宅で薬剤師が信頼されるために必要なこと

この経験を通じて、僕が強く感じたのは 「信頼される薬剤師」になるための2つの力です。

  1. 薬学的な視点から新規処方を提案する力
    医師が担うのは「-(マイナス)を0に戻すこと」。
    薬剤師は「0を-に戻さないように支える」存在だと思っています。
    病態や薬理の知識を総動員して、処方提案できるのは薬剤師ならではの価値です。
  2. コミュニケーションを通じてアドヒアランスを高める力
    薬は「飲んでこそ効く」もの。
    小さな工夫や信頼関係づくりによって、患者さんが自然と服薬できる環境を整える。
    そのサポートができるのも薬剤師の役割です。

本当に薬剤師はいらない?

確かに、在宅の現場で「ただ配薬するだけ」なら薬剤師は不要かもしれません。
でも、病態に合わせた薬学的な提案や、アドヒアランス改善への工夫は薬剤師だからこそできることです。

僕は薬剤師として、当たり前のことをしただけ。
けれど、その当たり前の積み重ねが患者さんに安心を届け、信頼へとつながっていくのだと実感しました。


まとめ:薬剤師の在宅業務に求められる姿勢

在宅で薬剤師が本当に必要とされるためには――

  • 小さな工夫を惜しまないこと
  • 処方提案を積極的にすること
  • 患者さんや家族との関係づくりを大切にすること

僕はこれからも「薬を渡すだけの人」で終わらず、困っている患者さんに手を差し伸べられる薬剤師でありたいと思います。
その手がより力強く、安心を与えられるものとなるように、研鑽を続けていきます。

みなさんは、薬剤師の在宅業務にどんなイメージを持っていますか?

「ただ配薬するだけ」と思われるなら、確かに薬剤師はいらない。
でも、僕らが知識と工夫をもって積極的に提案していくとき、そこに薬剤師の存在価値が生まれると信じています。

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